我々の目指すもの

超高齢社会を迎え、急増する認知症といかに向き合うかは世界的にも大きな課題です。先進国では、今後2016年から2060年の間に70歳以上の高齢者の緩和ケアニーズが倍増し、とりわけ認知症の緩和ケアのニーズは世界で4倍近く、先進国でも3倍以上に増加することが予測されており(ランセット委員会報告:2019)、認知症はこれからの緩和ケアの主要な対象であると考えられるようになってきています。なかでも我が国の認知症患者数は2030年には830万人、2050年には1000万人を超える(高齢社会白書:2016)と予測されており、我が国は認知症の緩和ケアのニーズが最も急増する国であると考えられています。

認知症の緩和ケアアプローチは「単に身体的苦痛をとる治療やケアにとどまらず、認知症の行動・心理症状、合併する疾患、および健康問題の適切な治療を含む、認知症の全ての治療とケアを意味するもの」(EAPC:2015)とされています。丁寧な観察とケア、環境調整によってその人らしい暮らしの継続を支援することが認知症の緩和ケアの土台であること、危機的状況において治療負担に配慮しながら、ケアと医療、緩和ケア、リハビリテーションを統合して提供する必要があることはいうまでもありません。また、認知症の緩和ケアアプローチの実践には、暮らしの場である地域(自宅)や施設、急性期医療の場である病院などの場を超えて、多くの医療・介護の専門職、市民のの協働が欠かせません。

我が国の認知症の医療と介護の現場に緩和ケアアプローチを定着させ、苦悩の中に置かれている認知症高齢者とその家族にこのような総合的な緩和ケアを届けることは、緩和ケア、高齢者ケアの喫緊の課題となっています。

私たちが追求しなくてはならない認知症の緩和ケアをめぐる課題は多岐にわたります。例えば「摂食・嚥下障害など食に纏わる課題、末期の肺炎の苦痛に対する緩和ケア、終末期の褥瘡、疼痛など重度から末期の身体的苦痛への対応」「骨折や肺炎など合併症による急性期の痛みや呼吸苦などの苦痛」「行動・心理症状として表出される身体・心理的苦悩への対応」「心不全、骨折などの併存疾患のマネジメントと全身管理」「鬱、不安、不眠、孤独などの精神的な苦痛への対応」「認知症の方がもつSpiritual pain(実存的苦痛)への対応」「独居、経済的困窮、セルフネグレクトなど社会的な苦痛への対応」、「身体拘束を含む医療行為に伴う苦痛への対応や治療負担(treatable burden)への配慮」「認知症の方の苦痛の評価法の確立」「認知症の告知に伴う苦痛への配慮」「認知症の方の本人本位のACP(アドバンスケアプランニング)推進」「認知症の方の家族ケア」「遺族の悲嘆ケア」「経済社会的状況によるケアの格差」などです。また、究極的には専門職だけでなく、Compassionate Communityを目指すことに幅広く市民や行政が参画することが必要であることはいうまでもありません。

私たちはこれら認知症の緩和ケアに関する実践、教育・研修、研究を推進するために、「認知症の緩和ケアに関する研究会」の活動を礎にし、一般社団法人「日本認知症の人の緩和ケア学会」を設立することを決定いたしました。我々は、本学会の活動が我が国の認知症の医療と介護現場に緩和ケアアプローチを根づかせること、そして緩和ケアアプローチの普及が認知症の医療とケアの質の向上に貢献することを心から期待しています。
本学会の主旨に共感してくださる皆さまの入会をお待ちしております。

以上を以て設立趣旨書とします。

学会事務局

一般社団法人「日本認知症の人の緩和ケア学会」
Japan Society for Palliative care for people with dementia (JSPCD)
〒277-8577
千葉県柏市柏の葉6丁目5-1 国立がん研究センター東病院内
メールアドレス:info@jspcd.org

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